愛にも刃にもなる

※好き勝手に書いています。一松が就労継続支援B型に通っている設定。後の5人は働いている。

 

 

得意なことなんてなかったけど、興味があったものはあった。イラストだ。学生時代にはそんなことしている暇なかったけど、今は内職後に事業所が閉まるまでアナログイラストを描いている。最初は下手すぎて自己嫌悪になりそうだったけど、スタッフの人に教えてもらって兄弟に『上手くなった。』と言われるくらいにはなった。アナログイラストに興味あって下手だけど続けてよかったと思う。

 

今日も内職が終わって疲れてけど、アナログイラストを描いている。どんな風に描きたいか頭の中で考えて描いていく。筆が乗ってきた時、他の利用者がおれのイラストをみてこう言ってきた。

 

「一松くん!もっとこうしたほうがいいんじゃない?」

 

そう言っておれが使っていた鉛筆をとって勝手に消して新しく描き始めた。ア、アドバイスは嬉しいけど、勝手におれのイラストに手を出さないでほしい…。でも、そんなこと言えるわけない。その人は善意でしているけどおれにとっては苦でしかない。結局なにも言えず右半分をその人に描かれて去っていった。普段ならなにも感じなかったかもしれないけど、今日はなんかしんどかった。下手なりにも楽しく描いていたけど何かがパキって折れた気がする。泣きそうになるのをぐっとこらえて早足で帰ることにした。スタッフの人に顔色悪いって言われたけど大丈夫って言って帰った。

 

帰り道に泣きそうになるのをこらえて家に帰った。家に帰ったら上3人がいたけど、仕事で疲れているから上で静かに泣こうとしたらチョロ松に呼ばれた。

 

「おかえり、一松。こっち来て一緒にお菓子食べない?」

 

厚意を無駄になんてできないから居間に行くと3人は笑顔で迎えてくれた。

 

「おかえり~いちまっちゃん!今お茶淹れるね。」

「一松も今日早かったんだね。一緒にお菓子食べれて嬉しいな。」

「今日は何をしてたんだ?詳しく聞かせてくれないか?」

優しい雰囲気になんか泣きそうになるとカラ松が近くに来た。

 

「ついさっき、スタッフの方から電話があって『一松さんの様子がいつもと違うからなにかあったんじゃないかと…お家で何があったかお話していただいて分かったら教えてください。』ってなにかあったのか?もし、言いたくないなら言わなくてもいいが…。」

 

そう言って頭を優しくなでてくれるもんだからおれの涙腺は決壊した。

 

「やっぱりなんかあったんだ。僕、濡れタオル持ってくるね。」

「よしよし、つらいことがあったんだな。いっぱい泣いていいからな。」

「お茶淹れたよ~っていちまっちゃん大丈夫?とりあえず座りな。カラ松を背もたれ代わりに使っていいから。」

「そうだな。そうしよう。一松、座れるか?」

 

おれは頷いてカラ松にもたれかかるように座るとお腹あたりにカラ松の手がきてトントンしてくれた。その直後にチョロ松がきておれの目元を拭いてくれた。子どもみたいだけど、今はそれが心地いい。

 

「一松、今日なにがあったか話すことできる?」

 

おそ松兄さんにそう言われたから話すことにした。たどたどしかったけど、3人は真剣に聞いてくれた。

 

「…ってことがあって。アドバイスは嬉しいけど、おれの世界観をなんか崩されたきがして…。」

「そうか~そんなことがあったのか。怒鳴らずに我慢できたね。」

「それから、勝手に消されて新しくつけたされたのも嫌だった。」

「それは嫌だったな。もし、次に同じことがあったらトイレ行くふりしてスタッフさんのところにいってもいいと思うぞ。」

 

チョロ松とカラ松がそう言ってくれた。

 

「一松、その利用者のこと嫌いになった?」

 

そうおそ松兄さんが問いかけた。

 

「…嫌いにはなってないよ。ちょっと苦手になっただけ。」

「分かってると思うけど、その利用者の陰口とか言っちゃダメだよ。なんかあったらスタッフさんとか俺らに言ってくれたらいいからね。」

「うん。それはしない。」

「いい子だな。一松、折り紙も得意だったよな。今度から事業所が閉まるまで折り紙するのもいいんじゃないか?」

「一松は折り紙上手だからね。今回のことスタッフさんに伝えていい?」

「いいよ。」

 

そう言うとおそ松兄さんが電話のほうに行った。今日したことを2人に話していると下2人が帰ってきた。

 

「ただいま~なんかあったの?おそ松兄さんが電話してたから。」

「ちょっとトラブルがあって…。3人に話したからもう大丈夫だよ。」

「了解マッスル!あっ、一松兄さん!会社の上司の息子さんが一松兄さんが通っているところを見学したいんだって。もし、利用になったら仲良くしてほしいって言ってた。」

「そうなんだ。分かったよ。」

「あっそうそう、今日は奮発して和牛買ってきたんだ!母さんと父さんが帰ったら一緒に食べよう。」

「マジで?めっちゃ嬉しい!」

 

しばらくしたら母さんと父さんが帰ってきて母さんが美味しい晩御飯を作ってくれた。明日からアナログイラストはお休みして折り紙でもしようかな…。おれも誰かになにか言う時は考えてから言うようにしよう。